オンラインのひな形は危ない?契約書テンプレートを使う際の落とし穴と対策を行政書士が解説

最近はインターネット上で、契約書や各種書面の「ひな形(テンプレート)」が簡単に手に入るようになりました。検索すればすぐにダウンロードサイトや無料テンプレートが見つかり、文章を多少手直しするだけで使えてしまう便利な時代です。
しかし、実際に行政書士として多くの契約書を作成・監修している私の立場から言うと、「ひな形をそのままコピペ」という使い方は大きなリスクをはらんでいます。今回の記事では、オンライン上のひな形を使ううえでの注意点や、トラブルになりやすい落とし穴をわかりやすくお伝えしていきます。
なぜ「ひな形」は広く使われるのか?
まずは、ひな形が人気の理由を考えてみましょう。
- 手軽でスピーディー
- 契約書や規約などを1から作ろうとすると、法律や業界の慣習を調べる手間がかかります。ひな形ならすでに構成が整っているため、「雛形をダウンロード → 置き換え → 完了」というスピード感で作業できることが魅力です。
- 無料または低コスト
- 多くの場合、インターネット上で無償または安価で配布されています。予算をかけずに事業を始めたい場合にはありがたいですよね。
- ある程度の完成度が期待できる
- 誰かが実務で使っていた実績のあるものがベースになっているケースが多いので、ゼロから作るよりは「それっぽい文章」になる可能性が高いと感じる人もいるようです。
こうしたメリットがあるため、スタートアップや個人事業主など、多くの方がひな形を活用しています。しかし、良いことばかりではありません。次の章では、ひな形に潜むリスクを見ていきましょう。
オンラインのひな形を使うときの5つの注意点
法改正に対応できていない可能性がある
法律はしばしば改正されます。労働関連法や個人情報保護など、定期的に大きな変更が入る分野も少なくありません。ところが、公開されているひな形がいつ更新されたかは明記されていないことがほとんどです。
古い法律に沿って作られている場合、条文が現行法とズレてしまい、効力を発揮しない、あるいは不利になる可能性が高まります。
チェックポイント
- ダウンロードしたひな形が最後に更新された時期はいつか?
- 新しい法令やガイドラインが適用される分野の文書ではないか?
自社や取引の事情に合わない条文が含まれている
ひな形は、“あくまでも一般的なケースを想定した“モデル文書”でしかありません。しかし実際のビジネスや取引内容は千差万別で、まったく同じ事情が当てはまるとは限らないのです。
自社固有の契約条件や、相手先との特別な取り決めを、単純にひな形に当てはめてしまうと「本当に必要だった条文が抜け落ちている」または「余計な条文が混ざっている」ことで、かえって混乱を招くことがあります。
例
- やり取りする金額や納期が一般的な相場と異なるのに、ひな形の文言だとカバーしきれない
- 契約解除のタイミングや、成果物の範囲が曖昧でトラブルに
不要なリスクを背負ってしまうおそれ
ひな形には「免責事項」や「賠償責任」をめぐる条文が含まれていることが多いですが、それがあなたにとってかえって不利になる場合もあります。
たとえば、「○○の場合、当社は一切責任を負わない」と書かれていても、実際は法律上それが無効になる場合がありますし、逆に相手側の立場を強くした条文が残ってしまっているケースも。「それ、うちには必要ない条文なのに…」ということも珍しくありません。
最新の商習慣や業界ルールを反映できない
ITやクリエイティブ、コンサルティングなど、急速に進化している業界では、最新の商習慣や特有のルールが生まれています。
しかし、多くのひな形は「古くからの一般的な取引」をベースにしているため、新たな取引形態(オンライン講座、Webサービスの利用規約など)を完全に想定していない場合が多いのです。
結果として、クラウドソーシングやオンラインサービスならではの問題(著作権や個人情報保護の範囲など)を契約書でカバーできていない、という事態に陥ることもあります。
信頼性の低いサイトから入手した場合の危険性
特に無料のひな形を配布しているサイトだと、運営者が不明だったり、内容の真正性(正しさ)をまったく保証していなかったりする場合があります。
「素人が趣味で作った契約書をそのまま配布している」なんてケースもゼロではありません。もし間違いだらけの文書を使ってしまい、ビジネスの現場でトラブルが起きても、誰も責任を取ってはくれないのです。
実際に起こりやすいトラブル例
- 納期や役務範囲がはっきりしないまま契約を結び、後から追加作業を巡って対立
- ひな形には「納期は発注から10日後」などと書かれていたが、実際はもっと複雑なスケジュールが必要だった。
- 古い個人情報保護の条文を使っていたため、法改正後の要件を満たさずに問題が発覚
- ひな形が前のバージョンの個人情報保護法のままだった。
- 金銭トラブル発生時に、裁判所の管轄や準拠法が曖昧で協議が長引く
- ひな形のデフォルト条文がそのまま残っており、自分たちが想定していた管轄とは別の地域になってしまい、面倒が増えた。
こうしたトラブルを防ぐためには、ひな形を使う場合でも事前にしっかり手を加えて、自社や取引相手の要望・リスクを洗い出す必要があります。
どうしてもひな形を使いたいときのチェックポイント
「スピードやコストを考えると、とりあえずひな形をベースにせざるをえない…」という場合は、以下のポイントを押さえておくと少し安心度が増します。
- 信頼できるソースを選ぶ
- 公的機関や、法律専門家が監修していると明言されているサイトを選ぶ。
- 更新日の記載や改訂履歴がしっかりあるかを確認。
- 法改正や業界特有の規則を自分である程度チェック
- 労働法や個人情報保護法、特定商取引法など、自分のビジネスに絡む主要な法律だけでも調べ、ひな形と照らし合わせる。
- 業界の最近のトレンドやルールが反映されているかを確認。
- 不要な条文は思いきって削除
- 逆に書き足りない部分があれば、手動で追加。
- 「いまの取引には必要ない」「古い情報」の項目はすべて整理し、よく考えて仕上げる。
- 相手にもドラフトを確認してもらう
- 相手方の意見を聞き、「ここは納期があいまいだから修正したい」などのフィードバックを吸い上げる。
- 双方の意見を踏まえ、できる限り納得のいく形に落とし込む。
- 最終的に専門家にチェックを依頼する(可能なら)
- 時間や予算に余裕があれば、行政書士や弁護士に最終確認をお願いするのが安心。
- 「これで大丈夫かな?」と思う部分だけでも相談すると、思わぬ落とし穴を指摘してもらえるかもしれません。
ひな形の危険回避に行政書士を活用しよう
ここまで読んでみて、「やっぱりひな形だけでは不安だな」「うちのビジネスの特殊事情を反映できるかどうか…」と感じた方は、行政書士などの専門家に相談するという選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。
行政書士に依頼するメリット
- あなたの事業内容や取引条件を深くヒアリングしてくれる
- 「納期はどう設定すべきか?」「相手方の業種による規制はないか?」など、具体的に質問してくれるため、抜け漏れを防ぎやすいです。
- 法改正や業界特有の最新情報をキャッチアップ
- 個人情報保護法や特定商取引法など頻繁に改正される法律でも、専門家が最新動向を把握していれば、古い条文を使わずに済みます。
- オリジナル要望をしっかり盛り込める
- ひな形にない特別条項や、追加で盛り込みたいリスク回避策なども、法的に問題ないか検証しながら作れます。
- 書類作成コストを結果的に抑えられる
- 初めは専門家への報酬がかかったとしても、トラブルによる損失や、後からの修正費用を考えれば、結果的にお得になるケースが多いです。
まとめ:ひな形はあくまで「たたき台」
- オンラインのひな形は便利でスピーディーな反面、法改正への未対応や、自社・取引先の事情に合わないリスクがある。
- 「免責事項」「賠償責任」の記載など、内容によっては不利になる可能性もある。
- どうしても使いたいなら、ひな形の更新時期をチェックし、不要な部分を削除・追加してカスタマイズする。
- 可能であれば、行政書士など専門家に最終確認を依頼すると安心。
ひな形はあくまでも“たたき台”として活用し、「自分のビジネスに合わせた修正やチェック」を入れることがとても大切です。文書ひとつで大きなトラブルを防ぐことができるのも、契約書の魅力でもあり、怖さでもあります。大切なのは「トラブルになったとき、ちゃんと機能するかどうか」。
もし「やっぱりひな形では不安…」「もっとしっかり作り込みたい」と感じたら、ぜひ行政書士に相談してみてください。専門家のサポートを受けながら契約書を整えることで、後々の心配をグッと減らせるはずです。あなたのビジネスがトラブルなく成長していくよう、応援しています!
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