初めての外国人採用で知るべき「技人国ビザ」と書類の落とし穴

外国人材を採用したいと考える企業が増えています。特にITエンジニアやグローバル営業職などは人手不足を解消できる上に、新たな視点をチームにもたらしてくれる大きなチャンスですよね。
しかし、外国人採用にはビザという高いハードルが存在します。とりあえず内定を出してから「あれ?この人、本当にうちの業務と関係ある経歴だったっけ?」と気づいても後の祭り。ビザ申請時に不許可となり、採用計画が白紙に戻ってしまうリスクがあるのです。
この記事では、在留資格「技術・人文知識・国際業務」(通称:技人国ビザ)をメインに、初めて外国人採用にチャレンジする企業が知っておきたい申請フローや注意点を詳しく解説します。
中でも、業務と全く関係ない経歴の外国人を安易に採用してしまったことで起きる「危険」について、徹底的に注意喚起します。
後悔しないためにも、ぜひ最後までご覧ください。
1. まず押さえておきたい「技人国ビザ」の特徴
幅広いホワイトカラー職種をカバー
「技術・人文知識・国際業務」は、ホワイトカラー系の職種を幅広く網羅する在留資格です。
- 技術分野(理系):ITエンジニア、機械設計、プログラマなど
- 人文知識分野(文系):経理、人事、マーケ、コンサル、法律関係など
- 国際業務分野:通訳、翻訳、海外営業、語学講師など
一見「どんな仕事でも大丈夫そう」と思いがちですが、決してそうではありません。仕事の中身と外国人本人の学歴や職歴が結びついていないと、ビザ申請で不許可になる可能性が高まるのです。
他の就労ビザとの違い
日本には、「介護」「技能実習」「特定技能」「経営・管理」など、ほかにもさまざまな就労ビザがあります。
- 技能実習ビザ:途上国から実習生を受け入れ、特定の技術や知識を習得してもらう制度
- 特定技能ビザ:特定産業(外食、宿泊、建設など)の人手不足を補う目的
- 経営・管理ビザ:会社の経営や事業管理を行う外国人向け
一方、「技人国」は大卒以上の学歴または専門学校卒(専攻が業務と関連)、あるいは実務経験10年(国際業務は3年)などの条件をクリアできれば取得可能。範囲は広いものの、だからこそ経歴不一致が起こりやすく、後から「えっ、全然ダメだった……」という事態が発生しやすいのです。
2. 「業務と無関係の経歴」を持つ外国人を採用すると起こる悲劇
ビザ申請が通らず内定取消に
「せっかく優秀そうだから採用したい」と思っても、その方の経歴(学歴・職歴)が業務内容と全く関係なければ、入国管理局は「本当に専門知識を要する仕事なのか?」と疑問を持ちます。
- 経営学を専攻したのに、なぜか「高度ITエンジニア」として申請
- 文系出身で、プログラム経験もゼロの方を「プログラマ」として雇用しようとする
- 語学スキルがないのに「通訳担当」と書類に記載
こうした経歴のミスマッチが原因で不許可になるケースは後を絶ちません。一度不許可になれば、その外国人は採用不可能になり、企業の採用計画もパー。せっかく時間と手間をかけて面接し、内定まで出したのにゼロに戻る——これほど無駄なことはありません。
転職時も要注意! 前職と全く違う業務だと危険
「すでに日本で働いている外国人なら大丈夫」と油断してはいけません。
- もともと「通訳翻訳」の在留資格で働いていた人が、次は「ITエンジニア」として応募してきた
- 前職では人事業務をしていたのに、次の会社では経理専門のポジションに応募
ビザを更新・変更する際に、「前職の経験と全然違う業務では?」と思われれば、やはり不許可リスクがぐっと上がります。「問題ないだろう」と軽い気持ちで採用してしまうと、入管手続きの段階で手詰まりになるかもしれません。
就業後に「やっぱりできない……」とトラブル発生
仮にビザが通ったとしても、実務未経験の分野でいきなり専門的な業務を任せるのは大きなリスク。
- 外国人社員本人が「やりたい」と言っていても、実はスキルが追いつかない
- 周囲の社員に負担がかかってしまい、チーム全体のパフォーマンスが下がる
- 最悪の場合、当初の業務と異なる雑用ばかりさせてしまい、入管からペナルティを受ける可能性も
経歴と業務内容の不一致は、採用後のトラブルや職場の混乱を招く原因にもなります。
3. 外国人採用の具体的な流れ(技人国ビザの場合)
それでは、実際にどのように外国人採用を進め、ビザ取得へとつなげればいいのでしょうか。流れと同時に、「経歴ミスマッチ」を防ぐポイントも押さえていきましょう。
募集要項の明確化
まずは求人募集の段階で、「どんな職種でどんなスキルが必要なのか」を具体的に書き出すこと。
必須スキル | プログラミング言語、通訳翻訳経験、デザインツールの使用歴など |
望ましい学歴や資格 | 大卒(情報工学専攻)、海外大卒(英語ネイティブレベル)など |
業務内容の詳細 | チーム構成、1日の仕事内容、必要なコミュニケーション能力など |
この時点で、業務と全く無関係な経歴を持つ候補者からの応募をフィルタリングできます。
また給与設定も大切で、あまりに低い給料だと「専門知識が必要なポジションとは思えない」と入管に疑われるため注意しましょう。
書類選考・面接での経歴チェック
面接時には、以下のような点を徹底的にヒアリングすることをおすすめします。
- 大学(専門学校)の専攻や卒業研究のテーマ
- 実際に使えるプログラミング言語・ソフトウェア
- 前職での業務内容、担当したプロジェクト
- 日本での就労経験(アルバイト含む)があれば、その内容
「実務経験はあるんですか?」と漠然と聞くのではなく、「具体的にはどんなプロジェクト? どんな役割?」と掘り下げましょう。経歴書にウソがないか確かめる意味でも、深い質問をするのが効果的です。
内定後のビザ申請準備
(1) 企業が準備する書類
雇用契約書 | 業務内容、給与、勤務時間、雇用期間を明確化 |
会社案内・決算書類 | 事業内容や経営状況の安定性を示す |
登記簿謄本 | 最新のものを取得し、変更があれば整合性を確認 |
雇用理由書 | なぜ外国人が必要なのか、業務と本人の経歴がどうマッチしているかを 論理的に説明 |
(2) 候補者本人が準備する書類
卒業証明書や学位証明書 | 大卒以上なら学士号、専門学校卒なら専攻内容など |
職務経歴書 | 経歴が実際の業務に関連していることを明示 |
パスポート、写真、在留カード | すでに日本にいる場合 |
この段階で、「実は実務経験なかった」「本当は専門外だった」と発覚することもあります。早めに書類を確認し、整合性をチェックしましょう。
入管(出入国在留管理局)での審査
書類を提出してから1~3カ月程度が目安ですが、繁忙期や書類不備があるとさらに時間がかかる場合も。
書類不備 | 大不備→ 差し戻し → 再提出、というプロセスが続くと、在留期限に間に合わない可能性も… |
不許可 | 理由を把握し、改善した上で再申請。下手をすると、企業が「虚偽申請の疑い」を持たれ、今後の申請も厳しくなる事態に発展する恐れあり |
不許可リスクを避けるためにも、採用時点で経歴と業務内容のマッチングを綿密にチェックすることが非常に重要です。
4. 経歴ミスマッチを防ぐための具体的な対策
雇用前テストや課題提出を導入する
ITエンジニアやデザイナーなら、ポートフォリオの提出や簡単なプログラミングテストをやってもらうのが有効です。面接だけでは実力が見えにくいクリエイティブ職や技術職では、とくにおすすめ。
- 「GitHubアカウントを見せてください」
- 「テスト的にデザイン案を作ってみてください」
これらによって、口先だけで実務スキルがあると言っている人を見抜くことができます。
行政書士など専門家への相談
初めて外国人を採用する企業や、これまで苦戦した企業ほど、入管業務に精通した行政書士や弁護士に相談してみるのが近道です。
- 書類作成のノウハウがあり、不備や矛盾を見逃さない
- 「本当にこの経歴でビザが取れるのか?」を事前に判断してもらえる
- 不許可になりかけた申請の立て直しも期待できる
専門家の力を借りず独力でやると、見落としが発生しやすく、審査期間が大幅に伸びるリスクもあります。
採用基準の見直しと社内教育
一時的な人材不足だけを理由に、業務と無関係な経歴の外国人を雇うのは危険です。
- 採用基準を明文化し、各部署の現場担当者にも共有
- 社内の採用担当者や面接官のトレーニングを行い、ビザ要件に触れる程度の基本知識を持たせる
- 万が一採用後に問題が発生しても、部署間でサポートし合える体制を整える
5. 「海外からの直接採用」と「国内在住者の転職」の落とし穴
海外からの直接採用
海外在住の候補者を新規で採用するときは、在留資格認定証明書交付申請を行い、交付された証明書をその候補者に送り、現地の日本大使館でビザを取得してもらいます。
- 離れた場所でのやり取りになるため、候補者の実力や経歴を判断しにくい
- 直接会えないからこそ、オンライン面接や文書確認を徹底し、虚偽申告のリスクを減らす
- 渡航費や引っ越し費用など、企業側のサポートが必要な場合もある
国内在住者の転職
すでに日本で別のビザを持って働いている外国人を採用するケースでは、在留資格変更許可申請または更新許可申請が必要です。
- 前職と全く関係のない業務だと、審査が難航する
- 前職での勤務実態や納税状況が悪いと、申請に影響が出る
- 在留期限が迫っている場合、転職の時期や面接スケジュールをタイトに管理する必要がある
6. まとめ:安易な採用は大きなリスク。経歴と業務内容の一致が鍵
外国人を採用するメリットは大きい反面、「業務と全く関係のない経歴の人」を安易に雇ってしまうと、不許可のリスクや職場混乱などデメリットも甚大です。
特に「技人国ビザ」は幅広い職種を対象とするがゆえに、何でもアリではありません。入管が最も重視するのは、「専門性のある仕事を、その専門性を持った外国人がこなす」という事実。ここを無視して採用を進めると、後から手痛いしっぺ返しを食らうことになります。
今すぐできる対策
- 求人要件の見直し:本当に必要なスキル・知識を明確化
- 経歴チェックを徹底:職務経歴書や面接で具体的な経験をヒアリング
- 専門家への相談:ビザ手続きのポイントを押さえ、不許可リスクを下げる
- 社内体制の整備:採用後の研修やサポートをしっかり設計
グローバル人材を活用し、会社の成長につなげたいのなら、中長期的な視点で「この人の経歴はうちの業務と合致しているのか?」を見極めることが大切です。
もし何か不安や疑問があれば、早めに入管手続きのプロに相談してみてください。しっかり準備をすれば、外国人採用は企業にとって大きなアドバンテージになるはずです。
「でも、うちのケースは特殊だから分からない…」「具体的にどこをチェックすればいい?」という方は、ぜひ入管業務に詳しい行政書士へご相談ください。経験豊富な専門家なら、最初の求人募集段階からフォローしてもらえるので、後戻りのリスクを最小限に抑えられます。
外国人採用を成功させるためには、ビザ要件と業務内容のマッチングを徹底することが不可欠。ミスマッチ採用の落とし穴をしっかり回避し、安心・確実にグローバル人材を迎え入れましょう。
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不許可の場合⇒2回まで無料で再申請
ご依頼内容 | 料金 |
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在留資格認定証明書/変更(一律) | 77,000円 |
在留資格更新(一律) | 55,000円 |
永住許可申請 | 88,000円 |
帰化許可申請 | 143,000円 |
特定技能VISA(新規・変更) | 77,000円 |
特定技能VISA(更新) | 60,500円 |
在留資格取得 | 27,500円 |
資格外活動/就労資格証明書 | 22,000円 |
再入国許可申請 | 22,000円 |
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