技人国から「高度専門職」への在留資格変更のポイント
「日本で経験を積んで、もっと責任のあるポジションを狙いたい」「将来的には起業も考えている」という方の中には、現在の「技術・人文知識・国際業務」(以下、技人国ビザ)から“さらに上位のビザ”ともいわれる「高度専門職」への切り替えを検討している方もいるのではないでしょうか。
高度専門職ビザを取得すると、親を海外から呼ぶことができたり、永住権取得のスピードが早くなったりと、多くのメリットがあります。一方で、審査がかなり細かく、要件を満たさないと不許可になるリスクも高め。
この記事では、技人国ビザで就労している外国人が「高度専門職」ビザへステップアップするための要点を、分かりやすく解説します。外国人本人だけでなく、企業の人事担当者・経営者の方にも役立つ情報をまとめているので、ぜひ最後まで読んでみてください。
1. なぜ今、「高度専門職」への移行が注目されているのか?
1-1. 高度専門職ビザの特典が魅力的
高度専門職ビザは、その名のとおり「高度な専門技術や知識を持ち、日本の経済や社会に大きく貢献できる人材」に与えられる在留資格です。特典が多く、キャリアアップを考える方にとって大きな魅力となっています。
永住申請が早期化
通常は10年の在留実績が必要とされる永住権が、最短1年(※ポイント制で高得点を満たす場合)で申請可能になることも。
- 複数の在留活動が可能
研究や教育、経営など、ビザのカテゴリをまたいだ複合的な活動を認めてもらいやすいです。
1-2. 技人国ビザとの違い
技人国ビザ(技術・人文知識・国際業務)は、ホワイトカラー系の職種を幅広くカバーしますが、「特別優遇」があるわけではありません。
- 更新期間は1年または3年、最近では5年も多いですが、特別な優遇措置はない
- 家族帯同については通常の就労ビザと同様のルール
- 永住権取得には原則10年の在留実績が必要
一方で、高度専門職ビザは「優秀な人材を積極的に呼び込みたい」という日本政府の狙いもあり、いろいろな優遇があるという位置づけです。そのため、一定の年収や学歴・職歴をクリアできる人にとっては、技人国ビザよりもキャリアの可能性が大きく広がります。
2. 高度専門職ビザの「ポイント制」とは?
2-1. ポイント制の概要
高度専門職ビザは、年収・学歴・職歴・資格・研究実績などを数値化して合計ポイントが一定以上になることで申請可能となります。
- ポイントの合計が70点以上 → 高度専門職1号の要件を満たす
- 80点以上 → 1号の要件+より早い段階で永住申請が可能になる場合あり
具体的な項目例(※一部抜粋)
- 学歴:博士号なら30点、修士号なら20点、学士号なら10点
- 年収:年収300万円で10点、年収600万円で20点、など段階的に設定
- 職歴:3年以上で5点、7年以上で10点
- 日本語能力:N1なら15点、N2で10点
- 研究実績や特許:保有している特許数などで加点
自分がどのくらいポイントを持っているかを事前にシミュレーションしてみると、変更が可能かどうか見極めやすくなります。ポイント計算シートは法務省のウェブサイトなどにも公開されているため、一度試してみる価値があります。
2-2. 高度専門職「1号」と「2号」の違い
- 1号
初めて高度専門職に該当する人向け。研究活動や技術開発、経営・管理などの分野で活動する。 - 2号
1号として3年以上活動した人が移行できる。ほとんどの就労ビザの仕事に就けるようになるほか、在留期間の上限がなくなる。
3. 技人国ビザから高度専門職へ切り替えるメリット
3-1. 経営者やフリーランスを目指す人にも有利
「高度専門職1号(経営・管理分野)」を取得すれば、自社ビジネスを立ち上げる際にも有利になることが多いです。普通の「経営・管理」ビザを取るよりも審査が柔軟になることも。
また、将来的にフリーランス活動を検討している場合でも、高度専門職なら複数の活動を行いやすくなるため、一つの会社に縛られない働き方が可能になるかもしれません。
3-2. 家族帯同と永住権の優遇
先ほども触れたとおり、高度専門職になると家族に関する優遇が手厚いです。両親を一定条件の下で呼び寄せられたりする場合も。
さらに、永住権取得までの期間が短縮されるのは大きなメリット。例えば80点以上の高得点を持っていれば、日本で1年の在留後に永住申請できる可能性があります(ただし審査は別途行われるため、必ず許可されるわけではありません)。
3-3. 企業側にとっても人材確保が安定化
企業から見ても、「高度専門職」ビザを持つ優秀な人材が在籍しているのは大きな強みです。
- 長期在留が見込めるため、人材育成やマネジメントポジション登用もしやすい
- 従業員(高度専門職)が永住権を取れると、企業としても国際的な人材を安定確保できる
- 研究開発や海外事業などを加速させられる
つまり、本人だけでなく企業にもメリットがあるというわけです。
4. 高度専門職ビザへの変更手順
4-1. 自分のポイントを確認する
まずは自分が何点くらい取れそうかを確認するところから始めましょう。
- 法務省のポイント計算シートを利用する
- 学歴や年収、資格、職歴を漏れなく入力してみる
- ポイントが70点以上(または80点以上)になりそうかをチェック
もし数点足りない場合は、昇給や資格取得でポイントを上乗せする道も考えられます。「あと少しでクリアできるなら、学会発表や日本語N1取得を目指す」など、キャリアプランの調整を行うのも手です。
4-2. 必要書類の準備
高度専門職ビザに切り替えるには、在留資格変更許可申請を行います。主な必要書類は以下のとおりです(技人国ビザを取得していた方なら、一部書類は初回申請のときと似ています)。
- 在留資格変更許可申請書
- 入管(出入国在留管理庁)のウェブサイトからダウンロード
- ポイント計算表(法務省所定の様式)
- 自己申告の形ですが、後で証明書類と照らし合わせて審査される
- 学歴・職歴を証明する書類
- 卒業証明書、学位証明書、在職証明書など
- 年収や納税実績を示す資料
- 源泉徴収票、納税証明書、給与明細など
- 雇用契約書や会社案内・決算書類(企業に依頼)
- 勤務先が変わる場合、あるいは業務内容が変わる場合は詳しい説明が必要
その他、特許証明や学会発表の実績がある場合は、その証明書類を添付することでポイント加算を狙えます。
4-3. 入管に申請し、審査を待つ
書類をすべてそろえたら、最寄りの地方出入国在留管理局へ申請しましょう。審査期間は1~3カ月程度が目安ですが、書類不足や繁忙期などで延びることもあります。
- 不備があれば追加書類の提出を求められる
- 審査中に在留期限が来る場合でも、申請中であれば合法的に在留可能
4-4. 許可を得たら新たな在留カードを受け取る
無事に許可が出れば、在留カードを更新してもらえます。これで**「高度専門職ビザ1号」**への切り替えが完了です。
- 在留期限は最長5年
- 一定期間、高度専門職1号として活動すれば、2号への移行や永住権申請が視野に入る
5. 申請時の注意点と不許可を避けるコツ
5-1. ポイントの裏付け書類を漏れなく用意する
ポイント計算シートに「年収600万円」と書いてあるのに、源泉徴収票を提出したら実際は500万円だった……というような不整合があると、審査官からの印象は一気に悪化します。
- 学歴や資格→証明書類のコピーと原本提示
- 年収や納税額→源泉徴収票、納税証明書などの発行時期に注意
- 特許など→特許証書、または登録情報の控え
書類のミスや誤差が致命的になるケースもあるため、1つ1つ丁寧にチェックしましょう。
5-2. 行政書士や弁護士に相談するメリット
高度専門職ビザの申請は、通常の就労ビザと比べて必要書類が多く、審査内容もシビアです。「自分で全部やるのは不安」という方や、「企業として何を準備すればいいか分からない」という人事担当者は、行政書士や弁護士に相談するのが得策です。
- 書類作成やポイント計算を代行
- 不許可事例を踏まえたリスクヘッジ
- 追加書類の対応や入管との折衝もプロにお任せ
申請が一度不許可になると、再申請のハードルが上がる場合もあるため、「最初から専門家に頼むほうが結果的に早くて安心」というケースも多いです。
7. まとめ:高度専門職への道を切り拓こう
技人国ビザで働いている方が、高度専門職ビザへステップアップするのは**“キャリアを大きく飛躍させるチャンス”**でもあります。さらに、企業にとっても優秀な外国人材を長期的に活用できるメリットが期待できるでしょう。
- ポイント制の仕組みを理解し、必要な点数をクリアできるよう学歴・年収・職歴の強みをアピール
- 申請書類の不備や整合性に注意し、企業側と連携しながら準備を進める
- 永住権取得の優遇が大きいので、中長期的なキャリアや生活設計にも有利
もし「あれ、ポイントが微妙に足りないかも…」「業務内容とビザの要件がぴったり合うかわからない」など不安があれば、行政書士など入管業務の専門家に早めに相談してみることをおすすめします。
キャリアアップへの道は、思いのほか準備が必要ですが、きちんとクリアすればより自由度の高い働き方や将来設計が可能になります。ぜひ自分自身や会社の可能性を広げる一歩として、高度専門職ビザへの挑戦を検討してみてください。
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料金について
当事務所では明瞭で分かりやすい料金体系を採用しております。
不許可の場合⇒2回まで無料で再申請
3回目も不許可⇒着手金を全額返金
ご依頼内容 | 料金 |
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在留資格認定証明書/変更(一律) | 77,000円 |
在留資格更新(一律) | 60,500円 |
永住許可申請 | 110,000円 |
帰化許可申請 | 143,000円 |
特定技能VISA(新規・変更) | 99,000円 |
特定技能VISA(更新) | 82,500円 |
在留資格取得 | 27,500円 |
資格外活動/就労資格証明書 | 22,000円 |
再入国許可申請 | 22,000円 |
※永住や家族滞在など、在留資格によっては二人目以降は半額となります。
※転職や離婚&再婚後など大幅に変更のある更新については、変更と同じ料金となります。
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